粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置

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第1

趣旨
粉じん障害の防止に関しては、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)が全面施行された昭和56年以降、5次にわたり適切な作業環境管理、

作業管理、健康管理等の推進を内容とする総合的な対策を推進してきたところである。

その結果、昭和56年当時と比べ、平成13年においては、じん肺の新規有所見者の発生数が大幅に減少する等その成果を上げているものの、依然として毎年200人を超える有所見

者が新たに発生していること、新規有所見者のうち、アーク溶接作業及び金属等の研ま作業に係る作業者の占める割合が高いこと、トンネル建設工事業においては、新たな工

法の普及、機械の大型化等により粉じんの発生の態様が多様化していること等から、以下のとおり、事業者が重点的に講ずべき措置を定め、じん肺のより一層の防止を図るこ

ととしたものである。

第2

具体的実施事項

1

アーク溶接作業に係る粉じん障害防止対策

(1)

局所排気装置、プッシュプル型換気装置等の普及を通じた作業環境の改善

事業者は、屋内でアーク溶接作業を行う場合、粉じん則第5条に基づき、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならないが、この同等以上の

措置である局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチの設置等、粉じんの発散防止対策を推進し、作業環境を改善するものとする。

(2)

局所排気装置等の適正な稼働並びに検査及び点検の実施

局所排気装置又はプッシュプル型換気装置における検査・点検責任者の選任

事業者は、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置について、単に設置するだけではなく、粉じん則第12条に基づき、要件を満たすように適切に稼働させなければならない

これらの適切な実施を図るため、事業者は、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置のそれぞれの設備ごとに「検査・点検責任者」を選任するものとする。

なお、「検査・点検責任者」については、昭和58年10月11日付け基発第563号「局所排気装置等の定期自主検査者等養成講習について」(以下「563号通達」という。)に定める

「局所排気装置等の定期自主検査講習」を修了した者を充てるようにするものとする。



局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の検査及び点検の実施

事業者は、選任した「検査・点検責任者」に対し、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置について、粉じん則第17条から第21条までに規定されている定期自主検査及び点

検並びに検査・点検の結果に基づく措置を行わせなければならない。さらに、1月に1回以上の頻度で自主的な点検を行わせるものとする。
また、事業者は、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の定期自主検査を、それぞれ、「局所排気装置の定期自主検査指針」(昭和58年2月23日付け自主検査指針公示第5号

)及び別途示すこととしている「プッシュプル型換気装置の定期自主検査指針」に基づき実施するものとする。

なお、親企業の系列下にある事業場における対策を推進するため、親企業は、可能な限り、親企業の労働者に、563号通達に定める「局所排気装置等の定期自主検査インストラ

クター講習」を受講させ、その者が系列下の事業場の検査・点検責任者に必要な知識及び技能を付与するように努めるものとする。

ヒューム吸引トーチ又は全体換気装置の点検の実施

事業者は、ヒューム吸引トーチ又は全体換気装置についても、その日の作業を開始する前に点検し、これら設備が所要の性能を発揮するよう措置するものとする。

(3)

呼吸用保護具の着用の徹底及び適正な着用の推進

事業者は、アーク溶接作業を行う場合、粉じん則第27条に基づき、有効な呼吸用保護具を労働者に使用させなければならないが、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒ

ューム吸引トーチ等の有効な粉じん発散防止措置が講じられた場合には、その呼吸用保護具の使用義務が免除されている。また、労働者は、粉じん則第27条第2項により、呼吸

用保護具の使用を命じられたときは、当該呼吸用保護具を使用しなければならない。

さらに、防じんマスクについては、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第44条の2に基づき、型式検定に合格していることはもとより、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令

第32号)第27条により、厚生労働大臣が定める規格を具備したものを使用しなければならず、電動ファン付き呼吸用保護具については、昭和57年12月14日付け基発第767号に規

定する電動ファン付き呼吸用保護具 (JIS T 8157電動ファン付き呼吸用保護具を含む。)である必要がある。また、 呼吸用保護具については、労働者に適したものを選択する

ことが重要である。

これらの適切な実施を図るため、事業者は、次の措置を講じるものとする。

保護具着用管理責任者の選任

各作業場ごとに、「保護具着用管理責任者」を、衛生管理者の資格を有する者その他労働衛生に関する知識、経験等を有する者から選任するものとする。

呼吸用保護具の適正な選択、使用及び保守管理の推進

別途示すこととしている「防じんマスクの選択、使用等について」に基づき、保護具着用管理責任者に対し、次の適正な選択、使用及び保守管理を行わせるものとする。

[1]

呼吸用保護具の適正な選択、使用、顔面への密着性の確認等に関する指導

[2]

呼吸用保護具の保守管理及び廃棄

[3]

呼吸用保護具のフィルタの交換の基準を定めフィルタの交換日等を記録する台帳を整備すること等フィルタの交換の管理

(4)

健康管理対策の推進

じん肺健康診断の実施及びその結果に基づく事後措置の徹底

事業者は、アーク溶接作業等粉じん作業に常時従事する労働者に対し、じん肺法(昭和35年法律第30号)第7条から第9条の2までの規定に基づき、じん肺健康診断を実施しなけれ

ばならない。また、事業者は、その結果に応じて、当該事業場における労働者の実情等を勘案しつつ、粉じんばく露の低減措置又は粉じん作業以外の作業への転換措置を行う

ものとする。

じん肺有所見者に対する健康管理教育等の推進

事業者は、じん肺有所見者のじん肺の増悪の防止を図るため、産業医等による継続的な保健指導を実施するとともに、平成9年2月3日付け基発第70号「じん肺有所見者に対する

健康管理教育のためのガイドライン」に基づく健康管理教育を推進するものとする。

また、じん肺有所見者は、肺がんの発生リスクが高まり、喫煙が加わると更に発生リスクが上昇するとの知見が得られたことから、平成15年1月20日付け基安労発第0120001号

「じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行に係る運用について」に基づき、事業者は、じん肺有所見者に対する肺がんに関する検査(胸部らせんCT

検査及び喀痰細胞診)の実施及び積極的な禁煙の働きかけを行うものとする。

(5)
法令等の周知及びじん肺発生の再発防止対策の徹底

事業者は、労働安全衛生法第101条及びじん肺法第35条の2に基づき、講じなければならない粉じん障害防止措置の要旨を、アーク溶接作業を行う作業場の見やすい場所に掲示

する等により、労働者に周知しなければならない。

また、事業者は、労働安全衛生規則第585条に基づき、粉じんを発散する有害な場所に、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなけれ

ばならない。

さらに、事業者は、じん肺の新規有所見者を発生させた事業場について、その原因を究明し、その結果を踏まえた再発防止対策を講じるとともに、労働安全衛生法第18条に基

づき、衛生委員会において当該事項等を調査審議しなければならない。また、事業者は、衛生委員会を設ける義務のない事業場については、労働安全衛生規則第23条の2に基づ

き、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければならない。

(6)

じん肺に関する予防及び健康管理のための教育の徹底

事業者は、アーク溶接作業に常時従事する労働者に対して、じん肺法第6条に基づき、じん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を実施しなければならない。
この場合、粉じん則第22条に定める特別教育の科目に準じて実施するものとする。

2

金属等の研ま作業に係る粉じん障害防止対策

(1)

特定粉じん発生源に対する措置の徹底等

事業者は、金属等の研ま作業に係る特定粉じん発生源については、粉じん則第4条及び第10条に基づき、局所排気装置の設置、除じん装置の設置、湿潤化の措置等を講じなけれ

ばならない。

また、事業者は、特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内作業場については、粉じん則第5条に基づき、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じな

ければならない。

(2)

作業環境測定及びその結果に基づく措置の徹底

事業者は、常時金属等の研ま作業に係る特定粉じん作業が行われる屋内作業場においては、粉じん則第26条及び第26条の2に基づき、作業環境測定及びその結果の評価を実施し

なければならない。さらに、事業者は、労働安全衛生法第18条及び労働安全衛生規則第22条に基づき、測定結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関し、衛生委員会に

おいて調査審議しなければならない。なお、衛生委員会を設ける義務のない事業場については、事業者は、労働安全衛生規則第23条の2に基づき、関係労働者の意見を聴くため

の機会を設けなければならない。 また、事業者は、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)に基づく評価が第3管理区分又は第2管理区分に区分された作業場については

、粉じん則第26条の3及び第26条の4に基づき、施設、設備、作業工程及び作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の

改善その他必要な措置を講じるとともに、粉じん則第26条第3項に基づき、改善措置の内容を記録・保存しなければならない。

(3)

局所排気装置等の適正な稼働並びに検査及び点検の実施

局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は除じん装置における検査・点検責任者の選任

事業者は、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置について、単に設置するだけではなく、粉じん則第12条に基づき、特定粉じん発生源に応じ、要件を満たすように適切に

稼働させなければならず、また、除じん装置については、粉じん則第14条に基づき、有効に稼働させなければならない。
これらの適切な実施を図るため、事業者は、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は除じん装置のそれぞれの設備ごとに「検査・点検責任者」を選任するものとする。
なお、「検査・点検責任者」の選任については、第2の1の(2)イのなお書きに準じるものとする。

局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は除じん装置等の検査及び点検の実施

事業者は、第2の1の(2)ロに準じた対策を推進するものとする。

なお、除じん装置の定期自主検査については、「除じん装置の定期自主検査指針」(昭和58年2月23日付け自主検査指針公示第6号)に基づき実施するものとする。

粉じんの発生源を湿潤な状態に保つための設備、全体換気装置等の点検の実施

事業者は、第2の1の(2)ハに準じた対策を推進するものとする。

(4)

呼吸用保護具の着用の徹底及び適正な着用の推進

事業者は、第2の1の(3)に準じた対策を推進するものとする。

(5)

たい積粉じん対策の推進

たい積粉じん清掃責任者の選任

粉じん作業場の作業環境を改善する方策の一つとして、作業場を常に清潔に保ち、床面等のたい積粉じんによる二次発じんを防止することが重要である。
このため、事業者は、粉じん則第24条に基づく、粉じん作業を行う場所の清掃を行う責任者として、「たい積粉じん清掃責任者」を選任するものとする。

たい積粉じん除去のための清掃の推進

事業者は、選任した「たい積粉じん清掃責任者」の指揮の下で、毎日の清掃及び1月に1回以上のたい積粉じん除去のための清掃を行わせるものとする。なお、事業者は、清掃

の実施に当たっては、粉じん則第24条第2項の規定を遵守しなければならない。さらに、事業者は、毎日の清掃においても、清掃作業による発じんが起こらないよう注意させ、

水洗又は真空掃除機を用いる等により清掃を行うものとする。

(6)

特別教育の徹底等

事業者は、特定粉じん作業に常時従事する労働者に対し、粉じん則第22条に基づき、特別教育を実施しなければならない。

また、事業者は、特定粉じん作業以外の粉じん作業に常時従事する労働者に対しても、じん肺法第6条に基づき、じん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を実施し

なければない。この場合、粉じん則第22条に定める特別教育の科目に準じて実施するものとする。

(7)

健康管理対策の推進

事業者は、第2の1の(4)に準じた対策を推進するものとする。

(8)

法令等の周知及びじん肺発生の再発防止対策の徹底

事業者は、第2の1の(5)に準じた対策を推進するものとする。

3

トンネル建設工事業における粉じん障害防止対策

(1)

ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインに基づく対策の推進

平成12年12月26日付け基発第768号の2「ずい道等建設工事における粉じん対策の推進について」において示された「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライ

ン」に基づき、事業者は、次の措置を講じるものとする。

[1]

粉じん対策に係る計画の策定

[2]

粉じんの発散を防止するための対策の実施

[3]

換気装置等による換気の実施等

[4]

換気の実施等の効果を確認するための粉じん濃度等の測定

[5]

粉じん濃度目標レベルの設定

[6]

坑内の作業に従事する労働者による防じんマスク等の常時使用

[7]

坑内の作業に従事する労働者に対する防じんマスク等の適正な着用のための教育

なお、事業者は、上記@の「粉じん対策に係る計画」を策定した場合には、労働安全衛生法第88条に基づき労働基準監督署等に提出する計画届に当該計画を添付するものとす

る。

(2)

健康管理対策の推進

事業者は、第2の1の(4)に準じた対策を推進するものとする。

また、事業者は、じん肺法第7条に基づく就業時のじん肺健康診断の実施を徹底するものとする。

(3)

元方事業者の講ずべき措置の実施の徹底等

元方事業者は、労働安全衛生法第29条に基づく措置を実施するとともに、「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」に基づき、粉じん対策に係る計画の

調整、教育に対する指導及び援助、清掃作業日の統一、関係請負人に対する技術上の指導等を行うものとする。

また、元方事業者は、昭和54年8月29日付け基安発第19号「特定粉じん作業に係る特別の教育の推進について」及び昭和61年7月16日付け基安発第30号「建設業粉じん作業特別

教育指導員講習の実施について」に基づく粉じん作業特別教育指導員(インストラクター)を養成するものとする。

(4)

トンネル建設工事業者の店社における対策の推進

トンネル建設工事業者の店社、特に中小地場店社において、上記第2の3の(1)及び(2)の徹底を図るものとする。

(5)

法令等の周知及びじん肺発生の再発防止対策の徹底

事業者は、第2の1の(5)に準じた対策を推進するものとする。

4

その他の粉じん作業又は業種に係る粉じん障害防止対策

事業者は、その他の粉じん作業又は業種についても、作業環境測定の結果、新規有所見者の発生数、職場巡視の結果等を踏まえ、上記の措置に準じて、粉じん障害防止対策を

推進するものとする。

5

離職後の健康管理

(1)

離職するじん肺有所見者等に対する健康管理対策の推進

事業者は、じん肺管理区分が管理2又は管理3の離職予定者に対し、離職者自らがじん肺の増悪及び合併症を防止するための健康管理の方法、じん肺に合併する肺がんのリスク

、喫煙による健康影響等を記載した「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック(以下「ガイドブック」という。)」を配付するものとする。

また、事業者は、粉じん作業に従事させたことがある労働者が、離職により事業者の管理から離れるに当たり、雇用期間内に受けた最終のじん肺健康診断結果証明書の写し等

、離職後の健康管理に必要な書類をとりまとめ、求めに応じて労働者に提供するとともに、当該書類の意義について労働者に説明することが望ましい。

(2)

健康管理手帳交付申請の周知

事業者は、労働安全衛生法第101条に基づき、労働者に対し、健康管理手帳制度について周知しなければならない。

このため、事業者は、健康管理手帳の交付要件(管理2又は管理3)を満たす労働者の離職が予定される場合には、ガイドブック等を活用し、離職予定者に健康管理手帳の交付申

請の方法等について周知するものとする。

また、健康管理手帳の交付要件(管理2又は管理3)を満たす者であって既に離職している者に対しても、事業者は、可能な限り、その周知を行うものとする。