社会保険の加入に関する下請ガイドライン(案)

参考資料

社会保険の加入に関する下請ガイドライン(案).pdf 国土交通省.ホームページ
   

 

社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン(案)

第1 趣旨

建設産業においては、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険(以下「社会保険」という。)について、法定福利費を適正に負担しない企業(すなわち保険未加入企業)が存在し、技能労働者の医療、年金など、いざというときの公的保障が確保されず、若年入職者減少の一因となっているほか、関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという矛盾した状況が生じている。

この対策に際しては、建設産業全体としての枠組みを整備し、行政、元請企業及び下請企業が一体となって取り組んでいくことが必要である。

このため、建設産業行政としては、建設業許可部局において、社会保険担当部局との連携
を図りつつ、
建設業許可・更新時や立入検査等における確認・指導、経営事項審査の厳格化、社会保険担当部局への通報等を行うこととしたところである。

他方で、下請企業を中心に保険未加入企業が存在している状況を改善していくためには、元請企業において下請企業の保険加入を指導する役割を担うことが求められる。

これについては、従来から「建設産業における生産システム合理化指針」

(平成3年2月5日建設省経
構発第2号)において、元請企業が下請企業に対して社会保険の加入及び保険料の納付について措置するよう指導等を行うことを求めているが、今般、下請企業の保険加入状況を把握することを通じて、適正な施工体制の確保に資するため、施工体制台帳の記載事項及び再下請通知の記載事項に健康保険等の加入状況を追加すること等を内容とする建設業法施行規則(以下「規則」という。)の改正を行ったところである。

本ガイドラインは、建設業における社会保険の加入について、元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にするものであり、建設企業の取組の指針となるべきものである。

第2 元請企業の役割と責任

(1)総論

元請企業は、請け負った工事の全般について、下請企業よりも広い責任や権限を持っている。この責任・権限に基づき元請企業が発注者との間で行う請負価格、工期の決定などは、下請企業の経営の健全化にも大きな影響をもたらすものであることから、下請企業の企業体質の改善について、元請企業も相応の役割を分担することが求められる。

このような観点から、元請企業はその請け負った建設工事におけるすべての下請企業に対して、適正な契約の締結、適正な施工体制の確立、雇用・労働条件の改善、福祉の充実等について指導・助言その他の援助を行うことが期待される。

とりわけ社会保険については、関係者を挙げて未加入問題への対策を進め、社会保険加入を徹底することにより、技能労働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に取り組むことが求められており、元請企業においても下請企業に対する指導等の取組を講じる必要がある。

建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)においても、元方事業主は関係請負人に対して雇用保険その他建設労働者の福利厚生に関する事項等の適正な管理に関して助言、指導その他の援助を行うように努めることとされている(第8条第2項)。

本ガイドラインによる下請指導の対象となる下請企業は、元請企業と直接の契約関係にある者に限られず、元請企業が請け負った建設工事に従事するすべての下請企業であるが、元請企業がそのすべてに対して自ら直接指導を行うことが求められるものではなく、直接の契約関係にある下請企業に指示し、又は協力させ、元請企業はこれを統括するという方法も可能である。

もっとも、直接の契約関係にある下請企業に実施させたところ指導を怠った場合や、直接の契約関係にある下請企業がその規模等にかんがみて明らかに実施困難であると認められる場合には、元請企業が直接指導を行うことが必要である。

元請企業においては、支店や営業所を含めて、その役職員に対する本ガイドラインの周知徹底に努めるものとする。

(2)協力会社組織を通じた指導等

元請企業による下請指導は、特定の建設工事の期間中、すなわち、元請・下請関係が継続している間実施する必要があるが、元請企業の協力会や災害防止協会等の協力会社組織に所属する建設企業(以下「協力会社」という。)に対しては、長期的な観点から指導を行うことが望まれる。

また、保険未加入対策を効果的なものとするためには、元請企業において保険未加入の協力会社とは契約しないことや、保険未加入の建設労働者の現場入場を認めないことを将来的に見据えつつ、協力会社の指導に取り組んでいくことが求められる。

このため、元請企業としては、様々な機会をとらえて協力会社の社会保険に対する意識を高めることが重要であり、具体的には次の取組を行うべきである。

ア 協力会社の社会保険加入状況について定期に把握を行うこと。

イ 協力会社組織を通じた社会保険の周知啓発や加入勧奨を行うこと。

ウ 適正に加入していない協力会社が判明した場合には、早期に加入手続を進めるよう指導すること。労働者であるにもかかわらず社会保険の適用除外者である個人事業主として作業員名簿に記載するなど、不自然な取扱いが見られる協力会社についても、事実確認をした上で適正に加入していないと判明した場合には、同様に指導を行うこと。

また、社会保険の未加入企業が二次や三次等の下請企業に多くみられる現状にかんがみ、協力会社から再下請企業に対してもこれらの取組を行うよう指導することが望ましい。

(3)下請企業選定時の確認・指導等元請企業は、下請企業の選定に当たっては、法令上の義務があるにもかかわらず適切に社会保険に加入しない建設企業は社会保険に関する法令を遵守しない不良不適格業者であるということ(公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針参照)を踏まえる必要がある。

このため、下請契約に先立って、選定の候補となる建設企業について社会保険の加入状況を確認し、適用除外でないにもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続を進めるよう指導を行うべきである。この確認に当たっては、必要に応じ、選定の候補となる建設企業に保険料の領収済通知書等関係資料のコピーを提示させるなど、真正性の確保に向けた措置を講ずることが望ましい。なお、雇用保険については、厚生労働省の労働保険適用事業場検索サイト(http://chosyu-web.mhlw.go.jp/LIC_D)において適用状況を確認することができる。

遅くとも平成29年度以降においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しないとの取扱いとすべきである。

(4)再下請負通知書を活用した確認・指導等施工体制台帳の作成及び備付けが義務付けられる建設工事において、再下請負がなされる場合には、下請負人から特定建設業者に対して再下請負通知書が提出される。規則第14条の4の規定の改正により、再下請負通知の記載事項に健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の加入状況に関する事項が追加されたことから、特定建設業者においては、再下請負通知書を活用して下請負人の社会保険の加入状況を確認することが可能となった。

(別紙1)

このため、特定建設業者たる元請企業は、再下請負通知書の「健康保険等の加入状況」欄により下請企業が社会保険に加入していることを確認すべきである。この確認の結果、適用除外でないにもかかわらず未加入である下請企業があり、(3)の指導が行われていない場合には、(3)と同様の指導を行うべきである。

規則第14条の2の規定の改正を受けた施工体制台帳については、別紙2の作成例を参考とし、適正な施工体制の確保に努めること。

(5)作業員名簿を活用した確認・指導等施工体制台帳及び再下請負通知書に関する規則の規定の改正に合わせて、各団体等が作成している作業員名簿の様式においても、各作業員の加入している健康保険、年金保険及び雇用保険の名称及び被保険者番号等の記載欄が追加されている。

(別紙3)

この作業員名簿を活用することで、建設工事の施工現場で就労する建設労働者について、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の加入状況(以下「保険加入状況」という。)を把握することが可能となった。

これを受け、元請企業は、新規入場者の受け入れに際して、各作業員(建設業に従事する者に限る。以下同じ)について作業員名簿の社会保険欄を確認すること。

確認の結果、

・全部又は一部の保険について空欄となっている作業員

・法人に所属する作業員で、健康保険欄に「国民健康保険」と記載され、又は(及び)年金保険欄に「国民年金」と記載されている者

・個人事業所で5人以上の作業員が記載された作業員名
簿において、健康保険欄に「国
民健康保険」と記載され、又は(及び)年金
保険欄に「国民年金」と記載されている
作業員
がある場合には、作業員名簿を作成した下請企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導すること。なお、法人や5人以上の常用労働者を雇用する個人事業所に所属する作業員であっても、臨時に使用され1か月以内で日々雇用される者等は、健康保険や厚生年金保険の適用除外となる。

元請企業が、各作業員の保険加入状況が記録された情報システムを利用するなど、作業員名簿の確認以外の方法により各作業員の保険加入状況を把握できる場合には、当該方法による確認も可能である。

各作業員の保険加入状況の確認を行う際には、必要に応じ、あらかじめ下請企業に社会保険の標準報酬決定通知書等関係資料のコピーを提示させるなど、記載事項の真正性の確保に向けた措置を講ずることが望ましい。

なお、作業員名簿に記載する被保険者番号等は個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項に規定する個人情報に該当することから、同法及び「国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン」に留意し、適切に取り扱うことが必要である。

遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである。

(6)施工体制台帳の作成を要しない工事における取扱い下請契約の総額が建設業法施行令で定める金額を下回ることにより施工体制台帳の作成等が義務付けられていない場合であっても、建設工事の適正な施工を確保する観点から、元請企業は規則第14条の2から第14条の7までの規定に準拠した施工体制台帳の作成等が勧奨されているところである(「施工体制台帳の作成等について」(平成7年6月20日建設省経建発第147号)参照)。

建設工事の施工に係る下請企業の社会保険の加入状況及び各作業員の保険加入状況についても、元請企業は適宜の方法によって把握し、未加入である場合には指導を行うことが望ましい。

(7)建設工事の施工現場等における周知啓発下請企業や建設労働者に対し、社会保険の加入に関する周知啓発を図るため、次の取組を行うべきである。社会保険未加入対策の開始当初の段階においては、重点的に取り組むことが必要であるので、特に留意すること。

ア 建設工事の施工現場において社会保険の加入に関するポスターの掲示、パンフレット等の資料及び情報の提供、講習会の開催等の周知啓発を行うこと。

イ (2)に記載したとおり、協力会社組織を通じた社会保険の周知啓発や加入勧奨を行うこと。

第3 下請企業の役割と責任

社会保険に関する法令に基づいて従業員の社会保険への加入義務を負っているのは本来的には雇用主であるため、社会保険加入を徹底するためには、建設労働者を雇用する者、特に下請企業自らが積極的にその責任を果たすことが必要不可欠である。

具体的には、次の責任を果たすべきである。

ア 下請企業はその雇用する労働者の社会保険加入手続を適切に行うこと。

建設労働者について、労働者である社員と請負関係にある者の二者を明確に区別した上で、労働者である社員についての保険加入手続を適切に行うことが必要である。なお、事業主が労務関係諸経費の削減を意図して、これまで雇用関係にあった労働者を対象に個人事業者として請負契約を結ぶことは避けるべきであり、請負契約の形式であっても実態が雇用労働者であれば、偽装請負として職業安定法等の労働関係法令に抵触するおそれがあることに留意する必要がある。

労働者であるかどうかは、

・仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無

・業務遂行上の指揮監督の有無

・勤務時間の拘束性の有無

・本人の代替性の有無

・報酬の労務対償性

をはじめ関連する諸要素を勘案して総合的に判断されるべきものであるが、保険未加入対策の推進を契機に、従来の慣行が適正なものかどうか見直しを行うことが望ましい。

その際には、期間の定めのない労働契約による正社員、工期に合わせた期間の定めのある労働契約による契約社員とすることもあり得るものであり、その実情に応じて建設労働者の処遇が適切に図られるようにすることが望ましい。

イ 元請企業が行う指導に協力すること。この協力は、元請企業が行う指導の相手方として指導に沿った対応をとることにとどまらず、元請企業の指導が建設工事の施工に携わる全ての下請企業に行き渡るよう、元請企業による指導の足りないところを指摘、補完し、もしくはこれを分担するとともに、再下請企業の対応状況について元請企業に情報提供することなども含まれる。

規則第14条の4の規定の改正を受けた再下請通知書については、別紙1の作成例を参考とし、適正な施工体制の確保に努めること。

なお、作業員名簿に記載する被保険者番号等は個人情報の保護に関する法律第2条第1項に規定する個人情報に該当することから、同法及び「国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン」に留意し、適切に取り扱うことが必要である。特に、作業員名簿の元請企業への提出に当たっては、利用目的(保険加入状況を元請企業に確認させること)を示した上で、あらかじめ作業員の同意を得ることが必要となることに留意すること。

第4 施行期日等

本ガイドラインは、平成24年11月1日から施行する。このガイドラインの施行前に元請企業が発注者と締結した請負契約に係る建設工事については、なお従前の例による。

本ガイドラインは、社会保険未加入対策の開始当初(平成24年度から平成25年度までの概ね2年間)における取組を中心に記載したものであり、今後、建設業における社会保険の加入状況や本ガイドラインに基づく取組状況等を踏まえて必要があると認めるときは、ガイドラインの見直しなど所要の措置を講ずるものとする